導入のポイント
近江八幡市立総合医療センターの入院受付と入院支援室では、多いときは1日40人の入院説明を実施。ポケさぽ導入前は、入院・手術が決定した患者さんが当日中に入院説明を受けるため、ご案内する時間が午後に集中。
ポケさぽ導入を機に、入院支援室での予約制を導入。1日の説明枠のうち半分を予約制に切り替え。
患者さんは後日入院説明を受けられるようになることで、気持ちの整理する時間や家族と相談する時間を持ったのちに、入院説明を受けられるように。
入院支援課も予約制により業務をコントロールできるようになり、記録業務を翌日に持ち込んでバタバタする状況が減少。
お客様情報
近江八幡市立総合医療センター
患者総合支援課 谷川様、同課 入退院支援室 塚本様、医事課 入院受付小松様、医事課 兼DX推進室 吉村様 総務課経営企画グループ 兼DX推進室 池田様
― 2022年度の院内展示会ではありがとうございました(参照:院内展示会でDX推進 〜近江八幡市立医療センターの取り組み〜 | 病院管理職の仕事術③/病院DX⑤)。今日参加されたみなさんが「ポケさぽ」を知ったのは、院内展示会が初めてでしたでしょうか?
初めは、オンラインの打ち合わせでの、ポケさぽのデモンストレーションだと思います。そのあと、院内展示会に来てもらって、みんなで触った感じです。
― 実際にポケさぽの話を聞いて、患者総合支援課で「これは使えるな!」という感じだったのでしょうか。
それがそんなことはなくて、当時は、医事課の入院受付が楽になるし良いかな、くらいしか考えてなかったのです。
― えええ、そうなのですか。それがどうして今のような活用スタイルになられたのですか?
入退院支援室 塚本様)私が育休から復帰したタイミングで、ポケさぽのことを知り、「あの説明も入れたい、この説明も入れたい」と進言して、適応範囲が入院受付から入院支援室まで広がった形です。
― そんな背景があったのですね。入院支援室は、ポケさぽ導入前どのような課題がございましたか?
近江八幡市立総合医療センターでは、平均して30名、多いときで40名の患者さんに入院説明を実施しています。以前は、入院や手術が決定した患者さん皆さんが、当日中に医事課の入院受付および入院支援室に来て、入院説明を受けて帰るやり方でした。
このやり方をすべての患者さんに適応すると、大きく3つの問題が起きていました。
入院や手術が決まった患者さんの中には、治療のことで頭がいっぱいなったり、術前検査で疲弊してしまったりして、入院説明の内容を覚えることができないこと
当日中に患者さんへ入院説明を行なうため、必然的に午後に説明業務が集中してしまうこと
記録業務は翌日午前中になることや、当日の患者さんへの入院説明開始時間が読めず、いつもバタバタしてしまうこと
― それらの状況に対して、ポケさぽを導入することで変化がありましたか?
ポケさぽ導入に際して一番変わったのは考え方です。いままですべてお話して伝えていたことを、「だれが」「どこで」「なにを伝える」かを分けて考えるようになりました。
「人が伝えるのか、動画で伝えるのか、紙やPDFでいいのか」「入院受付で伝えるのか、入院支援室で伝えるのか、自宅に帰って見てもらえばいいのか」と選択肢を持って業務を組むことができました。
そのうえで、入院説明の「予約制」を導入しよう、ということをみんなで決めました。
もともと予約制は検討していたのですが、きっかけがなく・・・。
せっかくポケさぽを入れて患者さんが入院説明のコンテンツをご自宅でも見られるようになったのだから、予約制に挑戦してみよう、と。
先にお話した3つの課題に対して、効果がありそうという仮説も持っていましたので。
― 入院説明をすべて予約制に変更されたのでしょうか?
いえ、50%が予約枠で、50%が当日枠で、入院説明を行なっています。
当日説明を受けて帰りたい患者さんもいらっしゃいますし、私たちもすべてを予約制にしてしまうとシフトの柔軟性が下がることもわかりまして。
予約枠と当日枠を半々にするのが、現状の最適解です。
― 50%を予約枠にすることで、3つの課題は解決に向かいましたでしょうか?
はい、少しずつ改善しています。
1つ目の「入院・手術が決定した当日では、患者さんが動揺・疲弊して入院説明を受け止められない」課題についてお話しします。入院説明を後日にすることで、ご自宅で気持ちの整理する時間や家族と相談する時間を持てるようになりました。ご自宅では、ポケさぽを通じて入院説明のコンテンツを事前にご覧になられた状態で入院支援室にいらっしゃるので、患者さんが入院に向き合っていただけるのを感じます。
2つ目の「入院説明が午後に集中してしまう」課題と3つ目の「記録業務が翌朝になり、バタバタする」課題は同時に解決に向かっています。午前の時間も患者説明の予約が入ることで午前の時間を有効に使え、予約があることで業務を前もって準備し進めることができるようになりました。おかげで、記録業務を翌日に持ち込んでバタバタする状況が減少しました。
― 予約制と同時に、ポケさぽ自体から得られたことはありますか?
医事課の入院受付では、説明時間が5分から2−3分へと短くなっています。
入院支援室では、話すことに関する疲労感が違います。入院支援室で今まで一番時間を掛けていたのが、「書類の書き方」でした。この部分を動画にしていただいたことで、「あぁー、たくさん説明して、疲れたなぁー」という回数が減っています。
病院自体の入院患者が増えているのもあるのと思いますが、予約制とポケさぽの組み合わせによって、入院受付と入院支援室が1日で対応できる患者さんが確実に増えていることは確かです。
― 最後の質問です。実際に貴院で導入されてみた実感を通して、どんな病院にポケさぽをおすすめしたいですか?
予定入院が多い病院にとって、ポケさぽは便利だと思います。あとは、入退院支援で困っている病院でしょうか。
国の方針で、タスクシフト・シェアが推進される中、病棟でかつては実施していた業務がどんどん入院前に実施されるようになっています。ですが、入院前の部署の人員はそう簡単に増えないのも事実です。
その場合、何かの業務を減らさないといけないのですが、まず考えられるのが同じことを何回も繰り返し行なっている業務です。入院案内は決して無駄な業務ではありませんが、同じ内容を何回も繰り返し説明する”行為”は無駄だと思ってポケさぽを導入しました。
ただデジタル化するのではなく、現場と一緒にDXのX(Transformation:トランスフォーメーション)を実行していきたい医療機関に、ポケさぽはおすすめです。
― ありがとうございます。ポケさぽをきっかけに予約制を稼働させ、患者さんの体験をトランスフォーメーションするお話、とても刺激的でした。