本記事の狙い
これまでのポケさぽ導入事例では、ひとつの医療機関様に焦点をあてて、患者説明やPatient Flow Management (PFM)における課題をお伺いし、ポケさぽを導入してどう解決してされているかを記事にしてきました。
PFMの観点から、術前説明・手術のご案内を動画化し、ポケさぽで患者さんにお届けする医療機関様も増えています。
今回は、「術前説明・手術のご案内」をテーマに、ポケさぽを導入された3病院からいただいたコメントを紹介する記事です。
「術前説明・手術のご案内」をテーマに、3つの病院からコメントをいただきました。
近江八幡市立総合医療センター 様
同愛記念病院 様
川崎幸病院 様
各病院様には、以下の質問にご回答いただいています。
術前説明・手術のご案内を動画化した背景
実際に動画化して感じること
動画の中で気に入っている部分
それぞれご紹介します。
近江八幡市立総合医療センター 様からのコメント
コメントしてくださった方:入退院支援室 看護師 塚本 章子 様
術前説明・手術のご案内を動画化した背景
当院では、入院前面談で「入院時問診の聞き取り」「入院生活のご案内」「手術前説明」を行っています。
そのうち、「入院時問診の聞き取り」に関しては、患者様の生活状況等の把握のため、ご本人・ご家族と直接お会いして聞き取る必要があります。
一方で「入院生活のご案内」「手術前説明」は、個別性のない決まった内容ではありますが、患者様に知っておいてほしい内容、また患者様が知っておきたい内容であり、省略することはできません。
この説明内容は正に「個別性のない決まった説明をする」ポケさぽを利用するのに適した内容であり、導入に至りました。
実際に動画化して感じること
「禁煙の必要性」「肺血栓塞栓症の予防について」「術前のワクチン接種について」「手術室入室時の注意事項」等の説明をポケさぽで視聴いただいています。
動画のナレーションでの説明に加えて、大きな文字やわかりやすいイラストの表示があり、どの世代の患者様にも理解しやすいと感じます。
従来使用している説明用紙には、細かい文字で文章が長々と記載されているのですが、動画化により、患者様の理解を得るのが早いと感じます。
動画の中で気に入っている部分
以前は、手術室入室前の注意事項として、「義歯・眼鏡・補聴器等を外す」「化粧をしない」「ネイル除去」「すべての装飾品を外す」等の細かい説明をしていました。
今は、「安全に治療を受けていただくために」というページのイラスト2枚で説明しています。口頭で話すよりも一目瞭然で非常にわかりやすいので気に入っています。
また、肺血栓塞栓症の予防についての説明も、高齢の方には伝わりにくいことが多く、口頭で仕組みを説明していましたが、わかりやすいイラストがあり気に入っています。
同愛記念病院 様からのコメント
コメントしてくださった方:患者サポートセンター 矢島 朋子 様
術前説明・手術のご案内を動画化した背景
これまで当院では、患者さんの入院後に病棟看護師が直接、術前説明を行っていましたが、入院前に患者さんが手術についての詳細を知る機会はなく、不安を抱えたまま入院の日を迎えていました。
そこで、手術室の看護師から「入院前に術前説明ができないか」と提案がありました。
患者さんが手術について予め理解した上で入院することで、患者さんの不安の緩和や術後合併症の予防につながりますし、看護師の業務負担の軽減も期待できます。患者さんと看護師の双方にとって有益だと考え、術前説明・手術のご案内を動画化することにしました。
実際に動画化して感じること
動画化することで、患者さんは分からない部分を何度でも見返して確認できるのでイメージしやすく、理解が深まると感じています。
また、看護師が直接説明しなければならない内容が減って効率化が図れると同時に、特に重要な説明などに時間をかけられるようになりました。患者さんから届く「動画に対する理解度」を病棟看護師と共有することで、理解度が低い患者さんにはより丁寧に説明するなどのフォローもできるようになりました。
また、動画を作る工程で、事務員が術前説明の内容を把握できたという副次的なメリットもありました。患者さんから手術室についての質問を受けた際に、事務員もスムーズに回答できるようになりました。
動画の中で気に入っている部分
事前の歯科受診の必要性が分かりやすいです。
入院当日の説明では間に合わないため、事前にアナウンスすることが有効だと感じています。
実際の手術室の写真を挿入している部分では、手術室にむかっているイメージができるようになっており、不安軽減につながっていると感じます。
川崎幸病院 様からのコメント
コメントしてくださった方:川崎幸病院 麻酔科部長 高山 渉 様
術前説明・手術のご案内を動画化した背景
■説明をする医療者側からの考え
患者さんに入院説明と問診をするとき、やりとりされる情報には、その患者さん特有の情報(以下、特有情報)と、おしなべて皆さんに共通している情報(以下、共通情報)があるといえるでしょう。
特有情報に関しては、診療方針を変える因子となりうるため、得た情報から関連事象を想像して線を引くように繋いでいきます。特有情報は患者さんから得る情報を多く含みます。
一方、共有情報に関しては、患者さんに伝える情報の割合が多く、その内容はみなほぼ同じですが、そこにうっかりと抜け穴を作ってはいけません。
川崎幸病院では従来、入院案内を紙のパンフレットで行っていました。しかし、この方法では説明の質が一定しないという問題がありました。我々の忙しさの程度によって、説明が急ぎ足になったり、省略されたりすることで、患者さんへの情報提供が充分でない場合がありました。
共有情報においてはこのブレをなくし、患者さんにとって普遍的かつオンデマンドの情報源とすることで、安定化・効率化を図り、そのかわりに我々が特有情報に関与する機会を増やす。ポケさぽを導入し、動画を使って入院案内を行うようにしたねらいはここにあります。
■説明を聞く患者側の状況を想像する
患者さんは自身の病状を知り、その後にまっている治療や手術・入院生活など、日常生活とは大きく異なるイベントに向けて、医療者から説明を聞くことになります。心の動揺もあるでしょうし、そんな中で聞き慣れない言葉も多く混じっているであろう説明を聞いて、医療者が意図している「意味」を患者さんが受け取れているかどうか…一度の説明ではそれが実現できているとは言い難いでしょう。
上記の共有情報においては広範囲の情報であることが多く、その把握は薄くなりやすいでしょう。ご自身の状況や病歴などの特有情報を探索して、疑問や質問をきちんと医療者側に伝えられるか不明確なところがあると想像します。
共有情報においては情報をオンデマンド化することで、患者さん自身は、受け入れやすいタイミングで情報を繰り返し得ることができ、面談時にはきちんとピックアップすべき特有情報の情報にクローズアップしやすくなる。ポケさぽを導入し、動画を使って入院案内を行うようにしたねらいはここにもあります。
実際に動画化して感じること
動画化による効果は大きく、三つの点で特に顕著です。
第一に、患者さんが事前にすきなタイミングで動画から情報を得ることで、待ち時間のストレスや不満が減少しました(共有情報に関する患者さんへの効果)。
第二に、動画コンテンツを通じてスタッフも病棟の情報を深く理解できるようになり、教育効果も発揮されました(共有情報に関する医療者への効果)。
第三に、対面での説明時間が大幅に短縮され、より質の高いコミュニケーションに時間を割けるようになりました(特有情報に関する医療者と患者への効果)。
動画の中で気に入っている部分
個人的には、手術麻酔説明の動画の部分が最も気に入っています。患者さん自身が眠ってしまっている麻酔中の状況については、ご自身が実際に確認することは簡単にはできない状況です。
だからこそ、麻酔計画についての説明はより丁寧に、そして携帯できてオンデマンドで確認できる状況にセットすることの意義はとても大きいと考えています。術前の訪問の際には、動画での事前チェックを前提に、詳細説明と問診(特有情報)に集中できるので、安全と効率の向上につながっています。
まとめ
3つの医療機関の術前説明・手術のご案内についてのコメント、いかがでしたでしょうか?
近江八幡市立総合医療センター様では、注意事項についてスタッフが繰り返し行なっていた部分を、動画でわかりやすく伝えられることで、患者さんは理解度を高め、スタッフは効率的に入院説明を実施できていることがわかります。
同愛記念病院様では、手術室看護師と患者サポートセンターが連携し、病棟での説明業務を入院前の業務にタスクシフトするという業務改善を実施しています。
最後に、川崎幸病院様では、麻酔科の医師の術前外来において、患者さんの安心安全の提供と外来の効率化向上を実現されています。
ひとえに、術前説明・手術のご案内といっても医療機関ごとに課題も異なれば目的や解決策も異なります。医療機関様の、より良いPatient Flow Management (PFM)実現のために、この記事がご参考になると嬉しいです。
お客様情報
近江八幡市立総合医療センター 様
許可病床 407床
同愛記念病院 様
一般病棟病床数330床
川崎幸病院 様
病床数 326床