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委員会が変われば、病院が変わる| 病院管理職の仕事術②

こんにちは、オペリブログにアクセスいただき、ありがとうございます。

オペリブログでは、医療機関の組織運営や業務改善にまつわるトピックを発信していきます。


今回は、組織としての病院を専門に研究されている、簗取 萌さんに、病院管理職が知っておくべき知識として、病院の意思決定の仕組みを解説いただきます。

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こんにちは、簗取です。

私は、組織の観点から病院の意思決定の仕組みやマネジメントについて研究を行なっています。


病院で頻繁に起こる問題として、「物事が決まらない」「決めたはずのことがきちんと実行されない」といったことがあります。


今回は「病院における意思決定」について解説していきます。



なぜ病院では物事が決まらない?!


病院で勤務されておられる方々にとって、次のような場面に遭遇することが少なくないのではないでしょうか。

  • 医療現場では様々な医療スタッフが協力しながら仕事を進めているが、病院全体のことを決めようとすると議論が全く進まない。

  • 医療スタッフが病院全体に関わる議論に積極的に参加しようとしない。

  • 病院全体で決めたはずのことがきちんと実行されない。

こうした状況は「自分勝手な医療スタッフ」や「仕事のできない事務スタッフ」のせいで生じるのではありません。むしろ、「病院」という組織の特性上生じやすい問題と言えます。 このような問題を回避するためには、病院の特性や意思決定の仕組みをきちんと理解することが重要です。


まず、病院の組織構造を簡単に見てみましょう。病院では、医師、看護師、薬剤師などの様々な医療専門職が勤務しており、それぞれが各領域に特化しながら専門的な業務に従事しています。図1は、病院の組織図を簡単に表したものです。病院によって組織の構成パターンは異なりますが、大きくは診療部、看護部、薬剤部や検査部などの診療支援部、事務部に分かれ、院長等の最高意思決定者(機関)の下にぶら下がります。このような組織構造は、一般企業で多くみられる事業部制組織に近いものです。


病院や企業などの組織では、この組織図のハコとハコをつなぐ線が指揮命令系統となり、全体の調整が行われます。通常はその経路に従って全体を効率的にコントロールすると想定されています。



ミニ解説:事業部制組織とは


事業部制組織(divisional organization)とは、事業部(division)を構成単位とする組織形態のことを意味します。事業部とは製品別、地域別、顧客別に関連職能を束ねた、独立性・自立性の高い部門を意味します。例えば、日本で初めて事業部制を導入したのは松下電器産業(現 パナソニック)です。創業者の松下幸之助は、所有する工場群を「ラジオ部門」「ランプ・乾電池部門」「配線器具・合成樹脂・電熱器部門」に分けて事業部門化しました。


しかし病院では各部門に大幅に権限が委譲されている場合が多く、組織の上層部が各部門の情報を吸い上げたり、各部門の専門性の高い情報を理解したりすることが難しい状況があります。また独立性の高い各部門では、お互いに干渉しないという状況もあります。図2は、ある病院の診療科間の医師の様子の例です。部門間が分断しているような状況を「たこつぼ化」とよぶことがあります。病院に勤務経験がある人であれば、これに類似した場面に遭遇することもあったと思います。



この会議、意味あるのだろうか...


病院では命令系統に沿った調整や部門間の理解が不十分な状況にあるため、組織全体に関わる問題の解決は容易ではありません。そこで病院では委員会やプロジェクトを設置して、各部門の代表者の直接的な協議の場で問題解決を図ろうとしています。近年は患者ニーズが多様化・複雑化しているために、病院全体として対応しなければならないトピックスが多岐にわたります。ある総合病院では院内に70を超える委員会を設置しています。


では、実際の委員会はどんな様子なのでしょうか。私がこれまでに見てきた委員会では、「誰も発言しない」、「居眠りしている」、「そもそも出席しない」ことがしばしば起こっています。それらの委員会は、会議としては機能していません。その一方で、医療スタッフが職種を超えて活発に議論している病院も存在しています。



委員会が変われば、病院が変わる


病院での委員会が機能した例を紹介します。


病院全体で取り組むべき課題の1つに費用の適正化があります。医療機器や医療材料の高額化や消費税増税に伴い、病院の費用は年々増加傾向です。医療材料の適正な調達や管理の実現に向けて、多くの病院では医師などの医療スタッフから構成される委員会を設置しています。この委員会が実質的に機能するか否かが、病院全体のコスト意識や医療スタッフの行動に大きな影響を与えているのです。


ある病院の医療材料調達に関する委員会は、委員はコスト削減に向けた対策について全く議論せず、診療科医師が好き勝手に申請する高額な医療材料を全て承認していました。それに対して、別の病院の委員会では医師や看護師や臨床工学技士がそれぞれの知識を活かしながら医療材料のコスト削減のアイデアを積極的に共有し合い、実現可能性の高いコスト削減策を次々と決定していました。それらの対策はすぐに各部門に通達され、さらに実際の効果の検証まで行われていました。その様な委員会のプロセスの徹底により、「医療材料を無駄にしない」というコスト意識が各部門のスタッフに浸透していたのです。この2つの病院の例は、委員会の運営が病院全体の文化、意識、さらには経営にも大きな影響を与えることを示しています。


つまり、委員会が変われば、病院が変わる、と言えるでしょう。



まとめ


今回は「病院の意思決定」をテーマに、病院の特性や意思決定の仕組みについて記事を書きました。今回の記事のポイントは以下の3つです。

  1. 病院では部門間がたこつぼ化しており、病院全体として意思決定を行うことがそもそも難しい。

  2. 病院では、部門間の調整を図るために委員会やプロジェクトチームが活用されており、その重要性も高まっている。

  3. 委員会が実質的に機能するか否かが、病院全体の文化や医療スタッフの行動に大きな影響を与えている。

病院で勤務されている人たちにとって、委員会は副次的な業務で面倒くさいと思われていることも多いです。しかし、病院経営改善や医療の質の維持・向上にはそうしたヨコの連携が極めて重要です。この記事が、病院組織の特性や病院の意思決定の際に留意すべきことを理解する上で、お役に立てば幸いです。



参考文献

  • 植草 徹也. BCG流病院経営戦略: DPC時代の医療機関経営. 2012. エルゼビアジャパン.

  • 榊原 清則. 経営学入門. 日本経済新聞社. 2002.



--筆者--

簗取 萌

新潟医療福祉大学 医療経営管理学部 医療情報管理学科 助教

国立看護大学校看護学科卒業、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了(MBA)、一橋大学大学院商学研究科博士後期過程 単位取得後退学

ナショナルセンター集中治療室の看護師として勤務後、MBA取得し、病院経営コンサルティング会社にて大規模病院の手術室や看護部の業務改善プロジェクトに従事する。その後現職。


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