はじめに
患者説明を動画とメッセージで半自動化する「ポケさぽ」を提供するOPEReでは、ポケさぽの導入事例に加えて、病院運営に役立つノウハウの発信を行なっています。
この度、「病院リーダーシップインタビュー」という連載を始めます。ポケさぽをご導入いただいた医療機関の経営層の皆さんに意思決定・組織運営にまつわる話を伺う記事です。
その第1弾として、インタビューにお答えいただきたのは、菊名記念病院様です。前編・後編に分けて記事にしました。前編は赤間看護部長、後編は村田院長のお話をお届けします。
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インタビューに答えてくれた方
医療法人 五星会 菊名記念病院
看護部長 赤間 仁見 様
― この度は、インタビューを受けていただき、ありがとうございます。お話を伺いたいと思ったきっかけは、貴院での「ポケさぽ」の導入意思決定の早さです。「ポケさぽ」を導入した際の、経営層の話の経緯を教えていただけますか?
OPERe代表の澤田さんから、院長、事務長、わたし(看護部長)へ話をしにいらして、話を聞いたときに、現場の効率性や簡便化を考えるとやらない理由がなかったと記憶しています。
また、ポケさぽのようなシステムを導入する際に大事にしているのは、「スピード感」です。
当時を振り返ると、入院サポートの領域においては、コロナ禍で業務が急増しました。面会制限によってお荷物をお預かりするという業務を例にとっても。
― システム導入・DXについてに関する意思決定において、大事にされていることはありますか?
大事にしていることは3つあります。「スピード感」と「業務の対象」と「導入の始め方」です。
いまの時代、半年後には状況が変わってしまうことも想定しています。だからこそ、先程申し上げた「スピード感」は意識しています。
加えて、大事にしているのは、業務の対象です。システム導入およびDXに関する業務の対象を、「コロナ禍で業務が変わったところ」「ポストコロナとして、これから変わるところ」を中心に考えています。
業務対象を明確にしても、院内はいろいろ煩雑なものもありますので、小さく入れることも意識しています。
対象範囲が広く大きくなると、検討だけに数ヶ月時間を使ってしまいます。
小さく始めて、その後に、横展開するか深堀りするかを決めていけばいいと考えています。
― 3つ目の「小さく始める」ことについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
DX前の業務改善においては、改善された業務を「だれがやるか」というヒトの話をセットで考える必要が常にありました。
ただ、業務改善においては、「誰がやるか」より「何をやるのか」が重要です。何をやるのかをセグメントに分けて捉え、セグメントのいくつかを置き換えられるものはなにかをいつも考えています。
今回の「ポケさぽ」導入についても、入院説明のセグメントがイメージできたので、いくつかのセグメントをポケさぽに置き換えて、小さく始めました。
― システム導入のお手本のような進め方ですが、セグメントにわけて小さく始めるようになったエピソードなどございますか?
当院では、看護補助者の採用に苦労していた時期があります。
看護補助者の採用課題を整理してみると、実際の業務の中で、介護などの直接のケアに不安を覚えていることが課題の原因でした。
そこで、間接ケアという「リネンを持ってくる」「洗濯物を出す」「お薬をもってくる」「患者さん用のお茶を準備する」といった患者さんに直接かかわらない業務を切り出すことにしました。
直接ケアを行なう人は、病棟から離れない。間接ケアを行なう看護補助者は病棟から離れて業務をすることがあると定義して、その職種名をクリーンメイトとしました。
クリーンメイトとして募集をかけると採用の問題は解決しました。
名前を新たに採用する際、クリーンメイトの業務に対する疑念を抱くスタッフもいましたが、いまはクリーンメイトが看護師の多重業務の解決の一助になっていて、欠かせない存在になっています。
このような成功体験が当院の中では蓄積されて、セグメントに分けて考えられるようになってきています。
― 組織風土として、セグメントに分ける考えがあるのですね。組織風土の話題で伺いたいのが、貴院の実行力です。ポケさぽの導入においても、意思決定後から現場の運用開始までがとてもスムーズでした。意思決定後の実行においては、なにか意識されていることはありますか?
今回のポケさぽ導入については、副看護部長の長谷川に実行の部分を任せました。長谷川副看護部長はコンフリクトを起こさず業務を推進できる方なので、逆にその前段階をであるヒト・モノ・カネの整理に、わたしは注力しました。
実際に今回の導入においても、長谷川副看護長は、周りに声をかけて協力を得ながら前に進めてくれました。
長谷川副看護長
― 最後に、業務改善・DXに苦労されている病院管理者の中で、一歩踏み出せないと方もいらっしゃると思います。そんな方へアドバイスなどございますか?
一歩踏み出せないと感じるときは、改善のテーマを大きく捉えすぎているのではないでしょうか。
先程話したとおりですが、対象範囲を小さくして考えるというのは、ひとつのコツです。
また、業務改善を小さく捉えてもうまくいかないときは、改善によって業務が増えてしまうときです。
みなさんの中で業務上大切なことはわかっていると思います。
そこで2つ目のコツとして、大切なことは残しつつも、そうでないことはいっそのことやめてしまうことです。
やめるのには勇気が必要ですが、業務を減らしたり・やめたりすれば、周りも協力的になり改善を前に進めることができます。
― 業務を減らしたり・やめたりする例をひとつ、教えていただけますか。
先程の、看護補助者の業務の中で、間接ケア業務に特化したクリーンメイトの話がひとつあります。
病棟では、看護補助者が2名体制で、患者さんにお茶を配膳していました。その場でとろみなどを考慮しながら、温かいお茶を配っていました。
ここで大切なのは、お茶の「温かさ」でしょうか、「患者さんにあったとろみ」でしょうか。
実際に配膳しても患者さんがお茶を飲まれるタイミングはまちまちです。つまり温かいお茶を提供しても、温かいまま飲まれるとは限らないのです。
そこでお茶の準備を、
マラソンの給水所のように、お茶を準備する業務
用意されたお茶を配膳する業務
の2つにわけました。
つまりお茶を準備する中で、「患者さんにあったとろみ」を大切なものとして残し、温かさの優先順位を下げました。
勇気がいる改善ではありますが、このような形で、菊名記念病院では業務改善を進めています。
― 具体的なエピソード、とても勉強になります。今日は、業務改善の考え方について、いろんなエピソードを交えながらお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。
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菊名記念病院の赤間看護部長のお話、いかがだったでしょうか。
導入意思決定の早さの裏には、深い考え方やエピソードがあり、弊社としても大変勉強になりました。
次回は、後編として菊名記念病院の村田院長へのインタビューを掲載予定です。